『ピグマリオン』以来、約4年ぶりの舞台『密やかな結晶』に出演する石原さとみ。本作は、石原自身が舞台出演を熱望し、企画段階から参加。原作選びを行い、過去の作品で感銘を受けたという演出家・鄭義信との初仕事が実現。「自分の頭のなかでやりたいと思ったことが形になった」と語った石原が、舞台という表現方法の魅力や、自身の仕事に対する変化について語った。

――4年ぶりの舞台ですが、石原さんが熱望していたとお聞きしました。

石原:ずっと舞台をやりたいと言い続けて、やっと実現しました。これまで映像のお仕事が続いていたので、ようやくという感じでうれしいです。

――映画やドラマでも目覚ましい活躍をされていますが、舞台の魅力とは?

石原:私自身がドラマで育ってきたので、映像の仕事も大好きなのですが、舞台ってそのままのものが出るじゃないですか。映像や写真って切り取られて編集されるものですよね。極端に言ってしまえば、右目から涙が流れても、左から撮られていたら映らないわけじゃないですか。でも舞台ってダイレクトに伝わる。自身をさらけ出せるし、稽古期間もたくさんあるので、恥もかけるし失敗もできる。そしてそれを乗り越えることもできる。そういう部分がとても魅力的なんです。
 

――「恥をかける」とおっしゃいましたが、失敗することは恥ずかしいことではないのですか?

石原:まったくないです。ダメ出しされることも全然苦ではないです。舞台の魅力って稽古にあると思うんです。つか(こうへい)さんの『幕末純情伝』のときも、『奇跡の人』のヘレン・ケラーも、稽古期間は苦しくて「もう二度とやりたくない」って思っていたのに、やっぱりやりたくなってしまうんです。

――舞台ならではの怖さは感じないのですか?

石原:もちろん、不安もありますし、舞台に立ったらすべて自分で役柄を全うしなければいけないという怖さはあります。その点、映像はNGを出しても、いったん止めてもう1回やり直せるし、うまく編集してもらえることもあります。でも、やっぱり、自分自身をそのままお客さんに出すという、舞台の感覚が好きなんです。
 

――お話を聞いていると、未知のものへの探求心や吸収欲求が強いように感じられます。

石原:好奇心は旺盛ですし、確かに知識欲は年々増している気がしますね。テレビを見ていて「これがいい」と言われたりすると、自分なりに調べてみるところから始まって、知識を深めていきたいと思っちゃうんです。

――これまでの舞台経験で、得たことはなんですか?

石原:具体的にこれというのは難しいですが、舞台で経験した“時間”が財産なんですよね。“つかイズム”がなにかに活かされているかと問われても「これです」とは言いづらい。例えば、つかさんの思いや愛情を受けられたことも奇跡的なことですし、いまこの世にいなくなってしまったんだと虚しさや悲しさを感じられていることも奇跡。こうした感情は私のなかに、大きな存在としてありますが、女優としてなにに活かされているのか証明するのは難しいです。作品ごとでも『奇跡の人』では苦しさ、『幕末純情伝』は愛情、『ロミオとジュリエット』では危うさや儚さ、『ピグマリオン』では華やかさや輝き……とそれぞれ得たものは違います。
 

――本作は“記憶”や“消滅”というキーワードがテーマになっていますが、石原さんにとって消滅してほしくない記憶はありますか?

石原:私が写真集を作るとき、これまでの人生を振り返っていたのですが、その際に母親から、祖父母のお世話と、私たち子どもの世話が重なってとても大変だった時期の話を聞いたんです。私は当時、母親の苦労を知らなかったのですが、大変だった時代のことを聞けたことがうれしかった。母親の両親に対する愛情と、自分のお腹を痛めて産んだ子どもへの愛、大切な家族への思いというのは、ずっと忘れずに覚えておきたい記憶です。そしていつか私が同じ立場になったとき、それをしっかり子どもにも伝えられたらいいなって思いました。

――2017年を振り返ってどんな年でしたか?

石原:この舞台の原作を探すところから始まった2017年でした。さらに写真集『encourage』の発売、『24時間テレビ40 愛は地球を救う』のチャリティーパーソナリティ、テレビ番組で山中伸弥教授とお会いできたことなど、0から1にする作業ができた1年だったのかなと思っています。
 

――2018年は、連続ドラマ、舞台公演から始まり、蒔いた種が大きく花開く年になりそうですね。

石原:そうですね。いままでは自分の生活のなかで興味があることに対しては、どんどん掘り下げられる人間だったのですが、自分の仕事に対してはあまりそういうことをしてこなかったんです。でも、この舞台の原作探しもそうですが、仕事のためにいろいろなものを蓄えようという気持ちが強くなってきていますので、2018年は、その行動をより強く意識し、与えられたものに応えるだけではなく、自分から能動的にやっていきたいです。

――ますますの活躍が期待されますね。

石原:30代になって、いろいろやりたいことは考えています。「こうなったらいいな」ということはたくさんあります。それを実現するのは難しいとは思いますが、30代はいろいろとつかみにいきたいと思っています。そうすれば、きっとまた20代以上に充実した時間が過ごせると思うんです。

取材・文:磯部正和/写真:中村好伸
スタイリスト:宮澤敬子(W H I T N E Y)
ヘアメイク:菊地美香子(TRON)

舞台『密やかな結晶』
舞台『密やかな結晶』』 撮影:宮原 夢画 (MMF)

芥川賞作家・小川洋子(「博士の愛した数式」他)の同名小説を、日本アカデミー最優秀脚本賞・読売演劇賞最優秀作品賞の鄭義信(「焼肉ドラゴン」他)による上演台本で舞台化。石原が主演を務めるほか、村上虹郎、鈴木浩介、山内圭哉、ベンガルらが出演し モノと記憶の“消滅”が起こる不思議な島に生きる人々を描く。

【東京公演】2018年2月2日(金)~25日(日)
 東京芸術劇場 プレイハウス
【富山公演】2018年3月3日(土)、 4日(日)
 富山県民会館 ホール
【大阪公演】2018年3月8日(木)~11日(日)
 新歌舞伎座
【福岡公演】2018年3月17日(土) 、18日(日)
 久留米シティプラザ ザ・グランドホール

石原さとみ(いしはらさとみ)
1986年12月24日生まれ、東京都出身。2003年『わたしのグランパ』でスクリーンデビューを果たすと、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数々の映画賞で新人賞を受賞。その後も『包帯クラブ』(07年)、『フライング☆ラビッツ』(08年)、『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』(10年)、『風に立つライオン』(15年)、『進撃の巨人』(15年)、『シン・ゴジラ』(16年)、『忍びの国』(17年)などの映画に出演する一方、連続テレビ小説『てるてる家族』(03年)でヒロインを務めると、『失恋ショコラティエ』(14年)、『ディア・シスター』(14年)、『5→9~私に恋したお坊さん~』(15年)、『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(16年)など話題のテレビドラマへの出演が続く。2018年1月からはTBS系連続ドラマ『アンナチュラル』にも出演する。

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