作曲家・川井憲次「シーンがカッコよく見えること」がモットー 空気感作る映画音楽

『イップ・マン 継承』川井憲次インタビュー

『イップ・マン 継承』川井憲次インタビュー  クランクイン!

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 その、川井が考える“気持ちよさ”とは?

 「画に100%シンクロしつつも、さらにその映像の奥行き感を出したり、ストーリー的には関与しなくても膨らみをもたせることができたり等、色々ありますが、下世話な言い方をすれば、そのシーンがかっこよく見えること。映画音楽とは、その場の空気感を作り、お客さんの感情をコントロールするものだと思っています。それらを全部まとめて、かっこいいシーンができたらいいな、と。アクションでもそうですし、泣けるシーンでもかっこいいというのを目指しています」。
 
 日本を代表する作曲家でありながら、さらなる高みを目指す川井。最後に聞いてみたい。やはり、寝ても覚めても音楽のことを考えているのだろうか。
 
 「音楽のことを考えているのは、仕事をしているときだけですね。終わったら、スポーンと忘れます(笑)。また、映画やドラマは仕事なので、自分がやったもの以外は見ないですし、音楽も聞かない。作曲家によっては、歩いているときに曲が浮かんでくる人もいるそうですが、僕には一切ない(笑)。早く仕事を終わらせたいばっかりで(笑)。お酒を飲みながら、バラエティ番組を見ているのが一番幸せです」。
 
 バラエティで充電し、新たなる作品を生み出していく。この意外性も魅力のひとつだ。

 『イップ・マン 継承』は4月22日より公開。


 シリーズ最新作、かつ最終章となる『イップ・マン 継承』では、「新たに30曲ほどを1ヵ月弱で制作したと思います。ただ、3作目ともなると、ここにはこういう音が入るだろうな、と想像ができるので、やりやすい部分は多かったです」と、川井は制作当時を振り返り、シリーズものの利点を付け加える。「シリーズものにはメインテーマと呼ばれている曲があり、それはシリーズを通してずっと使えます。逆に、メインテーマが出てこないとおかしいくらい。そういった拠りどころがあると、こういうふうに作ろうと作戦が組み立てやすいんです」。
 
 では、そもそものメインテーマは、どう作られていったのだろうか。

 「最初に、どういうテーマなのかを掘り下げていきました。ドニー・イェンさんが演じているイップ・マンは、いわゆる、さぁどうだ! というヒロイックなものではなく、すごく真面目で淡々としている人物。それだけに、あまり大上段な音楽は似合わない。どうしたものかと、まずはメインではないところから何曲か音楽を作ってみたんです。すると、1作目の最初のほうの戦闘シーンで、ウィルソン・イップ監督が『この曲、テーマ曲にならないだろうか』というアイデアを出されたんです。僕は、まったく異論がないどころか、そういうことかと、すんなりと腑に落ちた。それからですね、曲作りのスピードがアップしていったのは」。
 
 『イップ・マン』シリーズでは、1つのアイデアがきっかけで世界が広がっていった。また、気心の知れた監督であれば、ぼそっ、と監督が呟いたことがヒントになることも多いそうだ。しかし、一番のポイントは、「映画の世界観」と川井は断言する。
 
 「映画には、どっちの方向に向かうのかという、枝分かれのポイントがたくさんあると思うんです。だからこそ、少しエレクトリカルなリズムがほしいとか、なるべく“生”でいきたいとか、最初に監督とざっくり話します。その方向性が決まってしまえば、あとは映像に合わせていくだけ。あと、大切にしているのが“自分が気持ちよくなれること”ですね。合わないものを作ると、これは違うな、と気持ちが悪く、絶対に修正しなくては気が済まない。もちろん、あとから画が変わったなどのアクシデントがあったとしても、その前までの段階で、お客さんのために、自分が気持ちいいと感じられるものを作る。これは音楽を始めて以降、未だにブレていない点です」。


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