人気ギャグ漫画を実写映画化した『斉木楠雄のΨ難』で、山崎賢人扮する斉木楠雄に思いを寄せる自意識過剰な学園アイドル・照橋心美を全力で演じ切った橋本環奈。『銀魂』に続きメガホンを取った福田雄一監督に「限界を軽々超えた」と言わしめたその表現力は、まさに今までの殻を打ち破る新境地だ。女優として快進撃を続ける橋本が、コメディ映画で演じることの楽しさや難しさ、笑いの絶えない福田組の舞台裏、さらにはソロデビュー後の演技に対する手応えなどを快活に語った。

―― 福田監督作品が2本続きましたが、オファーは別々に来たのですか?

橋本:実は『銀魂』の顔合わせのときに本作のお話をいただいたんです。福田監督から、「照橋心美はどうしてもカンカン(橋本の愛称)にお願いしたい」と言われたんですが、まだ『銀魂』の撮影も始まっていない時期。私がヒロイン・神楽(戦闘種族の少女)をどう演じるのかもわからない状況だったので、本当に予想外で驚きました。

――ということは、『銀魂』が終わってすぐに本作の撮影に入った感じでしょうか。

橋本:『銀魂』が終わってから2週間くらいしか空いてなかったですね。スタッフさんもほぼ同じだったので、トータルすると、福田組と約4ヵ月間ご一緒したことになります。ただ今回は、全編まるごとコメディなので、初日からすごく楽しそうな空気が流れていました。(福田組)常連のムロツヨシさんや佐藤二朗さんをはじめ、役者さんたちが、「何か面白いことをやってやるぞ!」みたいな意欲にあふれていて、福田組だからこその雰囲気というか、とにかく笑いが絶えない現場でした。
 

――ヒロインの照橋心美って、斉木に無視されても全く気付かない天然なところがありますよね。このキャラクターをどのように演じようと思ったのでしょう。

橋本:斉木楠雄が好きすぎて、完全に空回りしてるんですが、照橋さんの良さって、一周回ってそういうところにあると思います。絶対に私は「嫌われていない」と思い込んでいるし、斉木に煙たがられても「照れてるんだ」みたいに、全部自分のいいように捉えるところがすごくポジティブ。振り向いてくれなくても健気に追いかけるところなんて、ちょっと可愛いなぁって思ったりして。「ひねくれているようで、実はピュアなの?」とか、あれこれ考えはじめたら、「これは簡単な役どころじゃないぞ」という思いが湧き上がってきて、すごく気持ちが入りましたね。

――ナレーションで心の声も入ってくるので、余計に難しかったのでは?

橋本:そうなんですよ。結構長いセリフをしゃべるんです。それをナレーションで録って、現場で流しながら演技をつけていくんですが、照橋さんの表の顔は起伏が激しいのに、裏で思っていることは一切見えない、という面白さがあるので、その兼ね合いがとにかく難しかったですね。
 

――福田監督からは、どんな演出を受けたんですか?

橋本:それがすごく細かいんですよ。起伏の激しい照橋さんの表情筋が崩れていくときも、「はい、目を開けて」とか、「はい、そこで口開けて」みたいなことをずっと指導されて。もう、毛穴という毛穴を開いて全力で立ち向かいました(笑)

――感情表現よりも表情筋へのこだわり…福田監督らしい気がしますね。

橋本:そこがまた難しいのですが、確かに表情に対してたくさん注文はありましたが、演技もそこに織り交ぜていかなければならないし、前のシーンと後のシーンのつながりもあり、全体の流れもあるので、それを全て含めての演出ですね。私がすごいなと感じたのは、役者のみなさんがしっかりお芝居をしていること。もちろんアドリブもありますが、基本的にはちゃんと台本に沿って「演じている」からこそ生まれてくる「笑い」なんですね。お笑い芸人さんのコントも面白いですが、それとはまた違う世界だと思います。
 

――斉木を演じた山崎さんとは絡みが多かったと思いますが、彼とのセッションはいかがでしたか?

橋本:斉木楠雄って、全く感情が動かないようなキャラクターですが、照橋さんの妄想の世界では、かなり激しく動いているので、そのギャップが面白かったですね。山崎賢人さんも「もっと弾けたい!」って絶対思っていたはずですよ。あと、照橋さんは斉木くんからナレーションで突っ込まれることが多いんですが、現場でその声が流れているので、無表情で演技している賢人さんの顔を見ると、笑いが止まらなくなって大変でした(笑)

――それにしても照橋心美の空回りぶりはハンパなかったですね。よくあそこまで振り切れたなと感心しているのですが、途中で「これはちょっとリスキーかな」とは思わなかったですか?

橋本:リスキーだなと思ったことは1ミリもないです!(笑)。中途半端に演じたら、それが一番面白くないということを『銀魂』の現場で痛切に感じたので。照橋さんの表の顔も、裏の顔も、とにかく全力でやり切る。「これはちょっとやりすぎじゃない?」と思われるくらいがいいんじゃないかなと。福田監督の注文には全て応えたいなと思いましたね。
 

――2作連続で福田組の作品が続きましたが、自分の中で、女優としてまた1歩成長できたかな、と実感したところはありますか?

橋本:福田組で、神楽、そして照橋心美という今までに経験したことのない役に挑戦させていただき、ある意味、女優として「新しい扉」を開くことができたかなという感触はありますね。完成したときにスタッフさんから、「カンカンは公開まで作品を観ない方がいい、それくらい振り切っているから」って言われて(笑)。でも、それは最大の褒め言葉だと私は受け止めたので、すごくうれしかったですね。
(取材・文:坂田正樹 写真:坂本碧)

『斉木楠雄のΨ難』
「斉木楠雄のΨ難」

週刊少年ジャンプにて大好評連載中の漫画家・麻生周一による同名コミックを原作とする学園コメディ。最強の超能力を生まれ持ちながら、普通の生活を送ることを望む高校生・斉木楠雄(山崎)が、ワケありのクラスメイトたちによって見舞われるハチャメチャな日常を爆笑シーン満載で描く。『銀魂』『HK/変態仮面』シリーズなどの福田監督がメガホンを取る中、主演の山崎、橋本をはじめ、吉沢亮、笠原秀幸、賀来賢人、内田有紀、田辺誠一、さらには福田組の常連ムロツヨシ、佐藤二朗など、芸達者な個性派俳優が勢揃い。主題歌『恋、弾けました。』をゆずが担当している。

映画『斉木楠雄のΨ難』は10月21日より全国公開。

橋本環奈
1999年生まれ。福岡県出身。小学三年生より芸能活動を開始。13年にファンがインターネットに投稿したイベント写真がきっかけで注目を集める。その後、「天使すぎる」「千年に一人」と話題が広がり、ロート製薬、UHA味覚糖、など多彩なジャンルの企業CMに抜擢され、活躍の場を広げる。映画『セーラー服と機関銃 ‐卒業‐』(16)では初主演に加え、第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。他にも『暗殺教室』シリーズ(15~16)などに出演。2017年春公開『ハルチカ』では2作目の主演を務める。さらに、2017年夏公開『銀魂』、2017年秋公開『斉木楠雄のΨ難』ではいずれもヒロインを務め、フジテレビ系7月日曜21時連続ドラマ『警視庁いきもの係』においてもヒロイン薄圭子役を演じる。

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