『ブルーロック』は「自己啓発本でもある」 島崎信長&浦和希が語る“強烈なセリフ”の本質

インタビュー
2024年4月28日 11:00
『ブルーロック』は「自己啓発本でもある」 島崎信長&浦和希が語る“強烈なセリフ”の本質
(左から)浦和希&島崎信長  クランクイン! 写真:小川遼

 累計発行部数3000万部超を誇る大ヒット漫画『ブルーロック』。「エゴ」をテーマに日本全国の高校生フォワードが熾烈(しれつ)なサバイバルを広げるサッカー漫画で、テレビアニメ化に続き、劇場版の制作と破竹の勢いで成長し続けている。ただこの劇場版、ただの映画化ではない。『ブルーロック ‐EPISODE 凪‐』を原作に、本編/テレビシリーズの物語を別視点で描きつつ、さらなる物語/キャラクターの深掘りを計るファン垂涎(すいぜん)の内容となっている。本編の主人公・潔の前に立ちはだかる天才・凪と仲間たちにはどんな物語があったのか――。テレビシリーズから続投する凪誠士郎役・島崎信長と、第十八回声優アワードで主演声優賞を受賞したばかりの潔世一役・浦和希が、作品の魅力や収録の舞台裏を熱く語り合った。(取材・文=SYO/写真=小川遼)


■原初の欲求にある“エゴ”

――『ブルーロック』は“史上最もイカれたサッカー漫画”の異名を持つ作品です。お二人はこの作品に出会った際、どういった点に斬新さや面白さを感じたのでしょう。

浦:「究極的に強い世界一のフォワードを作るためのプロジェクト」という部分がこれまでなかなか切り込めなかったところではないかと個人的には感じています。作品全体を通して、とにかくオブラートに包まず、でもみんなが心の中でちょっと思っていることをストレートに言うところがありますよね。読んでいる自分も触発されて、いままで眠らせていた意見を言える勇気を与えてくれる作品だと思っています。そういう意味でも『ブルーロック』はサッカー漫画であると同時に自己啓発本でもあると思っていて。精神面に変化を与えてくれるところが魅力ではないでしょうか。

島崎:サッカー漫画とデスゲームを組み合わせた構造がすごくキャッチーで面白いですよね。その上で、浦くんが言ってくれた自己啓発的な部分は僕も感じます。成功者の美学や哲学的な部分まで踏み込んで言及されていますし、僕自身も争って競っていく業界で生きていて「その通りだな」と思うことが作中で数多く登場します。しかも、それを物語の都合で動かすのではなく、ちゃんと一人ひとりの人間性に落とし込んでいるから、人間味を強く感じられるんです。話の流れも良くできていますし、登場人物が各々エゴをもって人間らしく輝いていて、非の打ちどころのない漫画だと思います。

――お二人のお話、とても共感します。例えば「再現性のないスーパーゴールには価値がない」など、自分自身の仕事論にも落とし込める思考やセリフが多いですよね。

島崎:まさに凪が言われるものですね。

浦が演じる潔世一 (C)金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会
――『ブルーロック』の特徴として「うるせぇよ天才 今いいトコなんだよ」といった強烈なセリフの数々がありますが、セリフについてはどんな印象をお持ちですか?

浦:潔のセリフの中でずっと残っているものが「俺は俺のゴールで勝ちたい」です。“ゴール”という単語を他のものに置き換えたとしても、なかなか言う機会も思う機会もないものだと感じます。やっぱり「みんなで頑張ろう」というロジックのものが多いですし、このセリフに出会うまで「自分の力で何かを成し遂げたい」と思っちゃいけないと勝手に思って避けていたところがあったのですが、潔を演じる中で「思って/言っていいんだ」と気付けました。

でも考えてみれば僕自身も「自分のお芝居で作品を良いものにしたい」「自分の芝居でこの役を勝ち取りたい」という思いはありますし、さまざまな言葉を尽くしてマイルドにしてはいますが、原初の欲求にはそうした“エゴ”があります。言わないだけで実は持っていたんだと自覚するきっかけをくれた、好きなセリフです。

浦和希
島崎:自分たちと重なるところはあるよね。特にこうやって主演やメインのキャラクターを務める役者は、各々エゴを持っているものだと思います。「エゴ」と言うと悪いもののように聞こえるかもしれませんが、自分勝手=エゴではない。チームのためのエゴというものも存在しますから。

浦:すごく分かります。

島崎:僕個人でいえば「こんなセリフは経験がない!」というのはないといえばないし、あるといえばある、といった感じです。僕は「世界を滅ぼす」も「おはよう」も、どっちのセリフもあまり特別と思わずに演じています。例えば「世界を滅ぼす」と聞くと突拍子もない言葉に感じますが、日常生活を送っている中で「全部滅びちゃえばいいのに」と思うことってありますよね。その思考自体は魔王でも高校生でも同じですし、「おはよう」という、あいさつはどちらもするものだと思います。

人間としては重なる部分は絶対にあって、どこかを増幅したり削ったりすることで、その表現にたどり着くものです。かつ、「おはよう」というセリフ一つとっても一人ひとり違うものだと思います。そういった意味では全てのセリフが特別だし、特別でないともいえるんじゃないかと。僕はそういった考えで演じています。

――『ブルーロック』を見ていて、特異な環境に置かれていても各々に生々しさを感じるな、と思っていたのですが、今のお話を聞いて非常に納得できました。

島崎:アニメーションではありますが、「キャラクター」ではなくそこに生きている「人間」としてリアリティーや生々しさを感じてもらえたら、と思いながら演じているので、そういった部分が届いたのならとてもうれしいです。

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