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“悲劇”と“喜劇”を自由に操る 戸田恵梨香に心揺さぶられてしまうワケ

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戸田恵梨香

宮藤官九郎

 思えば、本作と同じクドカン脚本で、東野圭吾原作のドラマ『流星の絆』(2008年・TBS系)で演じた三兄妹の末っ子・静奈にも、さくらと近い悲喜劇の香りがあった。

 母の連れ子で兄とは血のつながりがないことを知らずに育ち、両親が殺されて以降、おとなしく地味に過ごすが、美人であることから「美人局」の役も行っていた。複雑な生い立ちからくる幸薄さを漂わせつつも、兄たちに守られ、愛され、悪事もやってのける。

 また、西荻弓枝脚本×堤幸彦監督で、加瀬亮とのダブル主演ドラマ『SPEC~警視庁公安部第五課 未詳事件特別係事件簿~』シリーズ(TBS系)で演じた当麻紗彩も、IQ201の頭脳と、特殊能力を持つSPECホルダーで、性格はガサツかつ変わり者ながら、両親と弟を亡くした過酷な過去を持っていた。怖さと悲しさ、笑いという異なる要素が詰まった『SPEC』シリーズは、戸田恵梨香の魅力を開花させた作品ともいえる。

 さらに湊かなえ原作×藤原竜也主演のドラマ『リバース』(2017年・TBS系)では、美人でつつましい性格のパン職人で、主人公・深瀬(藤原)と恋人関係になる越智美穂子を演じていた。ここでもまた、戸田は光と影を自在に使い分けている。口を大きく開けて笑う屈託なさ・明るさの一方、どこか影のある雰囲気がずっとつきまとっていたが、その影はじわじわと作品全体を覆うように広がっていき、後に事件に関わる大きな秘密を抱えていることが発覚するのだ。

 文学的香り漂うNHK連続テレビ小説『スカーレット』で演じた喜美子もまた、陶芸の土と炎に魅入られ、一心不乱に打ち込むことで他のことは何もかも、家族すら見えなくなる狂気や孤独、悲しさの中に、人間の滑稽さが見えもした。

 ちょっと不機嫌そうな眉根と、冷たさ漂う血管の浮き上がる白い肌、あけっぴろげな印象を与える大きく開けて笑う口は、悲喜劇を自在にコントロールする。そんな彼女が、家族の、人生の、さまざまな悲喜劇がたっぷり詰まった『俺の家の話』で担う役割は大きい。さくらに観山家が振り回されるように、視聴者の心もグラグラに揺さぶられてしまうのだ。(文:田幸和歌子)

<田幸和歌子>
1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムをさまざまな媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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