振り返るとトラウマシーンの連続! 青春映画の金字塔『スタンド・バイ・ミー』
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●「誰も俺のことを知らない場所へ行きたい」——クリスの涙
夜もふけて、寝ずの番をしていたクリスは、ゴーディに打ち明け話をするうちに、恵まれない家庭に育った自分の境遇がやり切れず、泣き崩れてしまう。普段はクールで大人びたクリスの脆(もろ)い素顔がのぞく、リヴァー・フェニックスの名演が光るエモい場面だ。
ところが、リヴァーは本番では泣く芝居がうまくできず、ライナー監督は「尊敬する大人が実は嘘つきで、君を裏切ったらどう思うか想像して」と諭した。その結果、リヴァーは素晴らしい芝居を見せたが、カメラが止まっても感情がおさまらず、泣き続けたまま。監督は彼を優しくハグして、キスをしたという。
本編では号泣シーンの後に、ゴーディが早朝の線路でシカと出会う神秘的な場面が続き、少年たちの「秘密」を共有した思いが観る者の心にいっそう強く焼きつく。
●「お前が死ねばよかった」——ゴーディの孤独
突然の事故で世を去った兄の葬儀に参列する悪夢の中で、父親から「お前が死ねばよかった」と冷たく拒絶されるゴーディ。ついに発見した少年の死体を前に、肉親の不条理な死と、親に愛されない孤独が蘇り、錯乱して泣き出してしまう。
映画『スタンド・バイ・ミー』(1986)より 写真提供:AFLO
撮影の前日、ロブ・ライナー監督はホテルの部屋でひとり、このシーンのせりふを書き上げた。監督自身、少年時代に両親から愛されていないと感じる葛藤に苦しんだ経験があり、せりふを書くうちに自然と涙が流れ落ちたという。
心の闇を親友のクリスに打ち明け、自分の価値を認めてもらえたゴーディのトラウマは静かにとけてゆく。死体発見の手柄を横取りしようと現れたエースたち不良集団に、銃を発砲するのは原作ではクリスだが、映画はゴーディに変更されている。友達のおかげで自分の強さに気づいた彼は、亡き兄の野球帽を奪ったならず者に、今度こそ一矢報いる。ゴーディを主軸に原作をドラマティックに改変した、技アリな名場面だ。
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