『鬼滅の刃』伊之助に“頑張った大賞”を捧げたい 『無限列車編』で見せた著しい成長

特集・レポート
2020年11月8日 08:00

■経験を活かした『無限列車編』

成長して無限列車へ テレビアニメより (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
 人の指図に苛立ちを覚えてしまう点や、常識はずれの行動など問題点は多いものの、真っ直ぐな分、意外と飲み込みが早いのが伊之助の良いところ。人ができることを吸収したがる負けず嫌いな性格が功を奏して、思いやり・仲間意識・自分の実力の認知を身に付け、伊之助は、無限列車に乗り込んだ。

 那田蜘蛛山で得た“協力”という技術を、伊之助はすぐに実戦で活かす。炭治郎にできないことを察知し、それを即座にカバー。漆ノ型・空間識覚を使って、敵の位置も把握した。無限列車の正体を見抜いていたのは、偶然か、それとも“野生の勘"か。どちらにせよ、彼の聡明さがなければ、今回の戦いは乗り切れていなかったのではないかと思えるほど、伊之助の力は向上していた。

 さらに戦闘面だけではない。けがを負った炭治郎をそっと優しく支えたり、列車の被害にあった乗客の救出に走ったりと、自分本位の力比べを脱却し、与えられた力を人のために使う戦い方を身につける。戦闘での力強さや、人を守る時の所作の柔らかさはアニメーションでも繊細に表現されていた。

 自尊心が高すぎるように見える伊之助だが、その心が傷つけられたとき、彼は責任転嫁したり、外の世界をシャットアウトすることなく、一時は落ち込みはしたものの、負けず嫌いの心に火がつき、自己を見つめて、再スタートを切った。

■自分を“足手まとい”と感じる瞬間も

 しかし、一難去ってまた一難。彼の心は、上弦の参・猗窩座にかき乱される。伊之助は、“煉獄さん”と猗窩座の様子を、刀を振り下ろしたまま立ち尽くして見つめていた。ここで自分が入ったら“足手まとい”になる。これまで自分を前へ前へと押し出していた伊之助が、この瞬間、自らを“足手まとい”と認めたのだ。

 『無限列車編』からは学ぶべきことが山ほどある。“煉獄さん”の前向きな姿勢や、物事への情熱、そして部下を思いやる気持ちは、我々の背筋をピンと伸ばす。炭治郎の無償の優しさと正義感にも、血が熱くたぎることだろう。

目を見張る成長を見せた伊之助 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』より (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
 SNSの反応やグッズの売れ行きなどを鑑みると、二人ほどではないかもしれないが、とはいえ、伊之助もよく頑張った。一度折れた心を回復させ、失敗をも吸収する力強さ。そして、意外と難しい“身の程を知る”ということも会得した。あの優しい炭治郎にすら本気で怒られていた初期の伊之助が懐かしく思えるほど、目を見張る成長っぷりだ。

 また、伊之助は、野生児でありながら、人間臭い性格を持っているのも面白い。他人に負けたくない・指図は苦手・人との接し方を知らない・自分を過大評価してしまうなど、多少誇張している点はあるものの、伊之助のぶち当たる壁に、思い当たる節がある人は多いのではないだろうか。

 その壁を超えることが容易くないということが、わかっているからこそ、『無限列車編』の伊之助が光る。炭治郎を“三太郎”と呼ぶなど相変わらずな点はあったが、今回の彼の立派な成長と活躍を讃えずにはいられない。もしかすると、『無限列車編』の縁の下の力持ちは、伊之助なのかもしれない。

※禰豆子の禰は「ネに爾」が正式表記
※煉獄杏寿郎の煉は「火へんに東」が正式表記

【『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』概要】
大ヒット公開中
配給:東宝・アニプレックス

【「テレビアニメ『鬼滅の刃』」概要】
Blu-ray&DVD第1巻~第11巻発売中

3ページ(全3ページ中)

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